[レビュー]
『AirWar 〜空戦 マッハの戦い(ホビージャパン)』
今となっては、むかしむかし。 オタクという言葉がネガティブな意味で生まれる前後…。 僕らは学校で、かなりオタクなクラブを作って活動していた。 コレはそんな頃のむかし語り。 放課後となれば特別教室に集い、サイコロを転がし、ヘクス世界のつわものになった。 そんな頃のうろ覚えレビュー。
ここはエリア8x…
サイコロに魂を売りわたした
放課後の外人部隊(エトランゼ)……
な〜んて気分にさせる、無限の大空から。
古戦場を巡るうろ覚えレビューです。
観光バスよろしく、ご案内したいところですが……周り一面、果てしなく続く青空。
ホント、なんにもありません。
でもね、よく見てください、ホラ。
マーカーが見えますか? アレが山頂。
そして、あのマーカーからコッチのマーカーを結んだ線が峰になります。
油断してると……BOO〜M!
山肌に激突です。
今回の古戦場巡りは、『AirWar 〜空戦 マッハの戦い』。
航空機マニアには堪らない、名戦闘機たちが大空を支配する、古き良き時代のゲームです。
それでは昔語りに、しばしのお付き合い…
……アレ? 僕ら、山の中、飛んでない…?
- 越後屋の菓子折り
「コレ、やってみませんか?」
まだ敬語が初々しい、新入部員のSМくんが出したのが『AirWar 〜空戦 マッハの戦い』である。
SМくんは極度の軍事マニア。いまだと、ミリオタ。
戦闘機の中で何が好きか、と話していると…。
「ミラージュは?」
と、混ざってきた。
「デルタ翼はなぁ…」「あの三角形の翼は安直だろう」
「え〜、ミラージュは性能いいんですよ〜。
ドラケンもウルトラホークもデルタ翼じゃないですか〜」
性能もデザインの内らしい。(笑)

そんなSМくんが持参した分厚い箱は、まるで"越後屋が差し出す菓子折り"のよう。
硬派なパッケージからは重厚な内容が予想される。
中から出てきたマニュアルがまた分厚く、チャートもとんでもない量だ。
ユニットの量もハンパなく、役割不明なものも多い。
僕らはそれまで、アニメ系シミュレーションゲームしかプレイしたことがなかった。
分かりやすいユニット構成とは、まったくの異質な別次元…。
しかしみんな、尻込みどころか、目をキラキラさせてた。
オタクが集まるオタクなクラブですからね。みんな「エリア88」大好きですよ。
戦闘機のユニットだけで、ワクワクが止まらない。(笑)

- 素人にはオススメできない。
・戦闘機の計器盤である「航空機/ミサイルコントロール表」(計器盤シート) ・ユニットを配置するマップ
プレイにはかなり広い場所が必要になる。
計器盤シートも大きいが、問題はマップだ。
移動するユニットがマップから飛び出したらどうするか?
使ってないマップを継ぎ足す。
再び飛び出したら?
空いてるマップを継ぎ足す。
どんどん継ぎ足す…延々、継ぎ足す…。
空は広いのだ。(笑)
当時は部室として特別教室を占拠してたから、長机も複数あったし、地の果てまで飛んでも困らなかった。
けども個人宅の部屋じゃ、かなり難儀するだろうね。これだから外国産は。(笑)
ゲーム内容を端的に言うと、盤上の「フライトシミュレーター」だ。
コクピットの中からマップ上までをシミュレートする。
・プレイヤーはまず、操縦桿等の操作として、計器盤シート上の計器類を操作する。 ・シートの結果をマップ上へ反映する。
ユニットを動かす手順はこんな感じ。
ゲーム進行はこれをベースに、ミサイル移動や攻撃などが加わる。[1]
やってみると、「計器飛行のフライトシミュレーター」といった印象だ。図上演習といってもいい。
マスターしたら、実際の戦闘機も飛ばせるんじゃないかな?
いやいや、大袈裟じゃないよ?
きっと、プレイした人なら頷いてくれると思う。[2]
単純な"宙返り"でさえ、ちゃんとした手順を踏まないとできないんだから。
かなり難しく、面倒くさいゲームシステムだけど、実際に操縦してる感覚があって、ソコがよかった。
当時は16bitパソコン・無印のPC-9801が出たばかりで、ワイヤーフレームの架空機シミュレーターがやっとだった。[3]
フライトシミュレーターなんて、軍事雑誌の向こう側の話。
そんな時代もあって、みんな不満もなく、嬉々として計器盤シートをイジってたな。
ゲームの進行は「ターン・フェイズ制」で、プレイヤーの行動は「イニシアチブ順」となっている。
「イニシアチブ」はこのゲームの特徴。
ターン開始時にサイコロを振って決めるのだが、機体の状況によっても修正が入る。
たとえば、A機がB機の背後についていると、B機が先の順番となり、A機はB機の行動を見てから行動できる。
双方、相手の背後を取ろうとする、ドッグファイト特有の展開になるワケだ。
とてもユニークで、プレイヤーを熱くさせるね。
- 愛機は86セイバー
それでは実践だ。
みんな
誰もが「ドッグファイト上等!」なので、むしろ歓迎である。
十数名かが2チームに別れると、めいめい好きな機種を選ぶ。
アレがどう、コレがそうと、ワイワイ楽しい。
クフィル、ハリアー、トムキャット、イーグル、A10…。
当時の最新鋭が選び放題。
そんな中、僕はロートルなF86セイバーを選んだ。[4]
「86ぅ〜? 86なんて、クフィルで一発撃墜ですよ〜wwww」
イキがるМSKくんに、僕は無言で不敵な笑みを浮かべてやる。
まぁ、見てなって…。
86セイバーを選んだのには理由があった。
ひとつは、好きなこと。[5]
もうひとつは"操縦がラク"なこと。
みんなが選ぶ最新鋭機は、計器盤シートの操作が多いんだ。
その点、86は最小必要限。
効果はすぐに出た。
みんなが計器盤シートにまごついている中、僕はサッサと完了してマップの前で待機する。
ちゃんと操作してるのか、疑われたほどだ。
操作が少ないからというと、ミリオタのSМくんがニコニコと「エリア88」の名言を呟く。
「操縦席のランプ一つ増えただけで混乱する」 談・モーリス
ロートルよぱわりはヤメロ(笑)。
さて、マップ上はといえば…。
みんな当たり前のように、正面の敵機めがけ、互いに真っ直ぐに突っ込んでいく。
僕はといえば、開始と同時に腹を見せ、高度をグングン上げていく。
マップを継ぎ足し、距離を縮める一群からかなり離れると、ふと上級生のUSMくんが首を傾げた。
「アレ? 虹色くん、ドコいった?」
クフィルのМSKくんが、明後日の方向に指を回し、天井の隅へ目を細める。
「たぶん、アソコらへん…」
コクピット間のやり取りのようで、一同爆笑。
まぁ、誰もが僕を、遠くでのんびり遊んでいるとでも思ったのだろうね。
そうこうしている内に、距離を縮めていた2チームが、真っ向で相対する。
射程に入った何機かが、すれ違いざまに、パンパンパン!
バルカンを射ち合うも……まぁ、当たるワケないんですわ。
相対速度が速すぎる。我先にって感じで加速してるんだから。
そのまますれ違い、反転動作。
それを横目に僕は、機首を下げつつ、コッソリ近づく…。
敵機が反転完了し、速度が落ちきったところで、うまい具合に後ろを取れた。
さて。どの子がイイかなぁ…。
ゆらり、ゆらり…と品定め。
「うわっ!いつの間にッ!」
クフィルのМSKくんが、背後から近づく86に気づいた。
泡くってスロットルをいっぱいに倒すも、もう遅い。
コッチは限界高度から降下し、限界速度まで加速してきているのだ。[6]
反転で速度が落ちたクフィルなど、まさに七面鳥。
じっくり距離を詰め、バルカンの射程に入れる…。
「インシャラ〜」とサイコロを振ると…ドンドンドンッ!
三発ほど命中!
とはいえ、さすがのクフィル。86のバルカン程度では、かすり傷程度のダメージだ。
一連射が完了すると、86はクフィルを追い抜いてしまった。
イニシアチブ逆転。
しかし、これは予定通りの一撃離脱。
気色ばむクフィルはいまだ速度が乗らず、そのまま僕の86は降下を続けて、難なく逃げおおせた。[7]
さて、もう一度…と、高度をあげつつ、大きく回り込んでいると、ゲーム終了となった。
結局、両チームあわせても、戦果は僕の一撃だけ。
いくばくかの経験値ポイントを得た。[8]
プレイ時間は、2、3時間ほどが過ぎていたか。
ゲーム内時間では、ものの三分ほどらしい。
アッという間の超音速の世界に、僕らはホフゥ…と溜息をつくのであった。
- 対地攻撃任務
いつもニコニコな副部長のADくんと、背は低いがマッチョなSZくんの企画で、対地攻撃シナリオをプレイすることになった。
ADくんとSZくんが共同で敵・地上部隊を担当し、他・十名ちかくが航空機による攻撃を行う。
目標は、山向こうの盆地にある、地上基地。
「低空飛行の山越え奇襲作戦」
そそるシナリオだ。
僕はまた86で…と思ったが断念。[9]
部長のIWTくんと一年のYTくんに合わせ、ハリアーに搭乗することにした。
ちょっと脇道にそれるが、ハリアーも好きな機種だ。
特にノーマル(?)よりも全天候型が好きだ。
しかし、賛同してくれる者にあったことがない。
ツルッと特徴のない団子っ鼻より、スゥっと伸びてカクっとしたアクセントの鼻がカッコイイと思うのだが。
「え〜〜、カッコわるいでしょ〜(笑)」
ミリオタのSМくんでさえこうだ。
いいのさ…全天候型さんの魅力が解るのは僕だけなんだ…うふふ。
キモい陰キャ遊びはソレとして。
三機編隊のハリアーで、低空を飛ばすのはなかなか気持ちイイ〜♪
空色のマップ盤が深緑の森に見えるようだ。
うっとり飛んでいると、地上部隊のADくんが。
「アレ? ソコのハリアー、山にぶつかってない?」
『AirWar…』では、山頂マーカーから数えて規定ヘックスごとに標高が下がる。
地形が分かりにくいシステムだ。
果たして数えてみると、山にぶつかってはいない。
いないが…マズイ…目前に山肌が迫ってる!
ハリアーの
「ど、ど、どうする?!」
引き起こしは間に合わない。
速度を落そうにも、エアーブレーキだってすぐに効かない。
「そ、そうだ! 空中静止!」
僚機のYTくんが機転を利かす。
三人、頭をつきあわせてルールブックから「偏向ノズル」の操作を探しだす。[10]
果たして操縦が間に合うと、三機のハリアーは空中静止。間一髪、山肌激突を回避できた。
「ふぅ…」
「…使ったね?」
地上部隊のADくんがニヤリ。
「赤外線感知! ミサイル発射だ!」
嬉々としてマッチョなSZくんがルールブックをめくり出す。
そう。ハリアーの偏向ノズルは赤外線を発するのです。
それは容易に対空ミサイル車の赤外線センサーに探知される。
チャフだ、フレアだと騒ぐも無駄。
SZくんがサイコロを振るまでもなく、判定で発射と同時にミサイル命中!
「BOO〜〜M!」
地上部隊のADくんとSZくんは、初戦果にハイタッチで大喜び。
そこに誰かが物言いをつけた。
「ソコ、山頂越えてないね。
探知できないンじゃない?」
「あ……」
そうだ。そもそも、山に激突するから空中静止の流れだった。
だから地上部隊からは、山が壁となって赤外線は探知できない。
見事な空騒ぎに、一同爆笑。
「おい、いま、ミサイル発射されなかったか?」
「またセンサーが誤作動したんじゃない?」
地上部隊のふたりが、おどけたひとコマを加えた。
結局、作戦は激突騒ぎをハイライトに、交戦はなく時間切れに終わった。
放課後のプレイでは、決着もなしに終わるのがフツーだった。
『AirWar…』もその例に漏れず。
「いつか、何日かかけてやってみたいね…」
などと異口同音にいってたっけ。
振り返ると、そんな機会も人数もなくなる。
老兵のお節介と笑っていいよ。
「若者よ、合宿でもなんでも、こじつけだろうと、機会を作って遊ぶがよろしい」
- UFOと飛翼竜

『AirWar…』のルールブックは、読み物としても面白い。[11]
ルール説明とともに、理由が書いてあったりするからだ。[12]
久しぶりにパラパラと眺めていると。
「UFO」ユニットと「飛翼竜」ユニットを見つけた。[13]
「UFO」/「飛翼竜」を撃墜せよ、というシナリオで、洋モノらしいユーモアだ。
そういえばあったね、こんなの…おや?
ユニットをほじくり返していると、これまた未確認飛行物体なみのユニットをみつけた。
【Me163】 【Me262】
二次大戦期のロケット戦闘機とジェット戦闘機だ。
詳細を探してみるも、見当たらない…。[14]
そういえば、昔も同じように探した覚えがある。
クラシック機が大好物な僕としては、ぜひ飛ばしてみたいのだけど…む〜ん…。
- エイコウ弾
ゲームと全く関係ないが、SМくんで思い出した話がある。
学校の階段をSМくんと上がっていると、工業科のある教師と出会った。
するとSМくんが、聞きたいことがあると、その教師に話しかけた。
「A先生って、エイコウ弾の設計したんですか?」
たしか、「エイコウ弾」といってた気がする。
ロケット推進で真っ直ぐ飛ぶだけ、誘導装置がないからミサイルではなくエイコウ弾、…そんな説明だった記憶。
A先生は、その国産初のエイコウ弾の飛行制御装置を設計した、ということらしい。
「どこで聞いたの?」
A先生といえば、いつもしかめっ面で厳しい、生徒からは敬遠される教師。
そのA先生が相好を崩し、ニコニコ顔だった。
「やっぱり! 本を読んでいたら、同じ名前があったんで、もしかしたら…と思ったンですよ!」
SМくんはまるで、憧れのアイドルに出会ったかのよう。
目をキラキラさせて話すSМくんに対し、にこやかに昔語りをするA先生は、少し自慢げに見えた。
傍で見ているだけの僕は、鳩に豆鉄砲。
まさか底辺学校のいち教師が、「国産初」を設計した偉い人物とは思いもしない。
しかも、常に厳めしいA先生が、孫相手のように頷き語っているのだから。
目を丸くするよりほかない。
それからは、A先生を見る目が変わったっけ。
- 総評
ルールブックをめくっていたら、「あの『Return to Europe』の"次に"難しい」と書いてあった。[15]
たしかに、ゲーム初心者お断りな難易度だね。
分厚いルールブックは敷居が高いし、リアルにこだわったルールはやたら細かい。
でも実は、それだけのコトなんじゃないかな?
読み解けないほどの難解な文章ではないし、そのルールが必要である説明もある。[16]
どうしてこうなのか、それがわかると「航空機」への理解が進んで楽しい。
せっかちに新鋭機[17]を選ぶのもいいけど、86セイバーやMig15からステップアップするのもいいんじゃないかな?[18]
飛び方を憶えて、
それが『AirWar 〜空戦 マッハの戦い』だ。
- [1]やや不正確だけど、イメージとしてはそう間違ってないと思う。
- [2]もちろん、身体的な問題はあるよ? 操作手順としての話。
- [3]PC-98なんて、もちろん持ってる人もいない。職員室にはあったけどね。個人では8bitマイコンがようやっと。夢のマシーンだったよ。
- [4]「【マッハの戦い】なのに、なんでセイバーがいるの?」 なんて、野暮なこといわない。非公式ながら、超音速だせるからイイの!(笑)
- [5]ブルーインパルス引退のTV番組で「最後の翼で飛ぶ戦闘機」と聞いて以来、ジェットでは一番好きな機種になった。
- [6]一瞬、うっかり音速を超えてしまったのは内緒だよ?(笑)
- [7]ロートル86といえど、降下速度はクフィルに負けない。実はあらかじめ調べていた。
- [8]昇格までは至らない。ノービス卒業の道のりは遠い…。
- [9]火力不足だったか、対地兵装がなかったか。
- [10]まるで、大気圏突入の段になってガンダム・マニュアルをめくるアムロだね。(笑)
- [11]そういえるほど、読み込んでいないけど。(笑)
- [12]ミリオタ御用達誌には負けるだろうけど、知ったかレベルの通にはなれるよ。(笑)
- [13]詳細はルールブックではなく、「シナリオブック」の方にある。
- [14]ミサイル、または標的機あつかいなんだろうかね…?
- [15]『Return to Europe』をホテル合宿でプレイしている人達を思い出し、つい吹き出してしまった。アレはそんなに難しいのか〜(笑)。
- [16]昨今のデザイン優先なものより、読みやすいし理解しやすい…そう思うのは老兵だからかね(笑)
- [17]いまとなってはどれもロートルだけど(笑)
- [18]おぼつかない仲間に、マヌーバをひけらかしてドヤ顔するのも楽しいだろ?(笑)
- 蛇足、または盤上の理由
『AirWar 〜空戦 マッハの戦い』は「フライトシミュレーター」だ。
コンピューターにたとえると、「インターフェース入力→結果演算→ディスプレイ出力」をプレイヤーが行う。
まさに「人力フライトシミュレーター」だね。(笑)
してみると、アセンブラ言語の楽しさに近いかもしれない。
直接CPUやメモリーをイジるアセンブラに比べ、高級言語は抽象化が進み、扱わなくなった。
どうやるか、どう動いているか、仕組みを知らなくても、ブラックボックスで問題ない。[19]
コンピューターのフライトシミュレーターも変わった。
家庭用ゲーム機でも遊べるようになると、フライトシミュレーターはどんどんゲーム化していき、感覚的な操縦でお手軽に飛行を楽しめるようになった。
「それはゲームだから」
そうだろうか?
実機はフライバイワイヤが進んで、ボタンひとつで着艦できる時代。
ドッグファイトもAI化が進み、そのうち無人機がメインとなるだろう。
――あ〜、小難しい御託はやめよう。
なにが言いたいのかというと。
もしかしたら、コンピューターのフライトシミュレーターよりも、『AirWar…』の方が操縦感が大きいかもしれない。
航空機好きならばなおさら、コンピューターとはまた違った満足感があるハズだ。
手元にある『AirWar…』は、遊ぶことはないだろう、読み物として中古を買ったもの。
けれども。
ひとり、飛ばすのも一興かな。
そんな風にも、老兵は思う。









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